書家 小野﨑啓太

無私~書のみかた⑥~

2018.1.17

無私~書のみかた⑥~

「無私」とはどういうことか。辞書を引いてみますと

無私:私心のないこと。無欲なこと。

とあります。

「良寛」の「一二三」という作を載せました。 いつだったか、ジュンク堂書店にてこの作が印刷された栞をもらったことがあり、えらく感動したことを覚えています。

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~書のみかた③~より抜粋

「良い字」と「うまい字」

言葉の綾のようですが、「良い」と「うまい」について知ってほしいと思います。

子供が鉛筆やクレヨンで書いたような、文字。おおらかで純真で素樸な、でも私たちから見ると「へたな」文字。よく下手な文字を形容するとき、「小学生が書いたような」ということを言われます。しかしそれは、私たち大人が真似るにも真似られない、「無私」の心を感じます。幼児の声が誰も似て大人の心をくすぐるものであるのと同じように、彼らの文字には楽しさや奔放さを感じます。

私はこれら子供の文字を「よい字」の代表格と考えています。
もちろんそれは一種の比喩ではあり、そのように大人が書くことが良いとは考えていません。このいわば「無私」に近い無欲で純真な文字が心を打つ。
文字を見て、文字から離れて、「いいな」と感じる。極言すればそれが「良い字」です。

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子供の字というと、とやかく言われそうな文字を想像します。

母親には、「もっときれいに書きなさい!」 そう言われてしまうでしょう。
しかし子供の字には、どこか愛らしさがあり、無欲で奔放で、楽しさを感じます。

ですが大人になると、「悪筆」だと言われるようになってしまったり、
上手くともどこか、文字にそっけなさを感じてしまったりするものです。

『文字を見て、文字から離れて、「いいな」と感じる。』

そのような文字は、どうしたら大人になっても書き続けることができるのでしょう。

非常にうまい、と感じる文字。もちろんそこから、私もうまさを感じます。美しさを感じます。しかしそれらはややもすると習気にあふれ、人物よりも先に技術を感じてしまうことも事実です。上手くても「良い」とは感じない。作られた美に、人は良さを感じづらいものです。

「書道」「習字」を習っていない方の文字に、とても感激することがありました。
彼は画家でしたが、決して(技術的に)うまいとは言えない彼の手紙の文字に、どこか品があり、柔らかみがあり、彼の人柄を感じ取ることができました。
彼がどのように書いているかはわかりません。

いまこのブログをお読みのみなさんは、たぶんまだ、こう感じています。

「どうしたら上手くなるの?」
「うまさじゃない?よさ?」
「だったらその良さは、どうしたら出るの??」

ハウツーですよね。ごめんなさい、「うまさ」だけはやっぱり伝えきることができないのです。

「文字Beauty講座」をこれから展開していこうと考えてはいますが、
そこにハウツーはありません。

「文字の美」を知るための講座であり、「美しい文字」の講座ではありません。

考え方を変えてみましょう。 「良さ」について。
なぜ、人は文字に「良さ」を感じるのか。

「相手が自分のことを考えてくれている。」

そう感じる。このことに尽きると僕は考えています。

伝えるべき事は何なのか。そのことの中に、少しでも、上記のことを考え、文字の「うまさ」については「無私」を保つ。考えないこと。「上手く書きたい!」という私心については、「無視」です。

それだけを悟ることができれば、文字は習う必要がありません。
それだけであなたの文字は「良い」字になると自信をもってお伝えします。

前章のブログをお読みいただきたい。二人が感じていたこと。
パソコンの文字は、「きれい」ですよね。
わたしもそう感じます。そしてパソコンの文字には「欲」がありません。
だから、現代人が文字を習うには、パソコンの字「活字」があれば十分なのです。
文字が美しい人の文字を習う必要はどこにあるのでしょうか? ありません。

しかしそれでは、ちょっと納得できない。 なぜ、文字には「美」があって、「うまさ」もあって、「良さ」もあるのか、それが知りたい。

だから「文字Beauty講座」を展開します。

「文字Beauty講座」 は、簡単に説明しますと、
「いろんな文字を書いてみよう!講座」です。

もしかすると、現代には即さない講座かもしれません。なんでもハウツー、ファストの時代です。
ここをこうしたらこうなる。 それなら、他にたくさんあります。
ぜひ他もご覧ください。

でも、「うまく」書こうとしたとき、なかなか自分の文字は変わりません。

「文字を体験してみる」こと。 で、あなたの文字は、更に変わります。

「文字をうまくするために」ではなく、「相手に心を伝えるために」

もう一度お伝えします。
文字は、相手のことを思う。
その対象を考える。

そのことだけで十分

小野﨑啓太