書家 小野﨑啓太

張遷碑~臨書①~

2018.5.12

張遷碑~臨書①~

先日の曹全碑に続いて「張遷碑」を臨書してみました。

左: 曹全碑(186)
右: 張遷碑(185)

同じ隷書、ほぼ同じ年代に刻された石碑ですが、
こう拓を比べてみると全然違うもののように見えます。

曹全碑の都会的で流麗、瀟洒な美しさ
張遷碑の野趣的で豪快、剛健な美しさ

ほっそりとしなやかでスタイルのいい曹全碑は女性的
豪快で筋肉質な趣のある張遷碑は男性的と
よく評されます。
(けど現代的には曹全碑のような男性も多いですので古い評し方かもしれませんね、笑)

曹全碑は陝西省、張遷碑は山東省で作られました。

同じ漢代の隷書と言えど西と東でこのように大きな差があったことがよくわかると思います。
185年頃というと後漢末期。184年には黄巾の乱が勃発し、漢政府の勢力は大きく傾きます。
曹操、孫権、劉備 の三人が覇権を争う三国時代に入る直前のものです。

205年に曹操が出した禁碑令(豪族間で流行していた建碑を、財政を圧迫するものとして禁止、打ち壊ししたもの)
によってこの時代の後の石碑は見られるものが少なく、後漢の石碑も多数破壊されたと思われるため、貴重なものです。
曹全碑はこの禁碑令により地中に埋められた(隠された)とされ、その後1000年もの間地中にあったために特に保存状態がよく当時刻された様子をはっきり見ることができます。

張遷碑は他の漢碑と同じく風化した箇所が多いですが、
風化もまた野趣的、豪快な線の響きに拍車をかけるものとなっているように思います。

左:臨 曹全碑
右:臨 張遷碑