書家 小野﨑啓太

2017.12.15

石

栃木県芸術祭美術展(2017)出品

※本作品の展示は終了しております。

「石」 105cm×135cm

作品の制作において重視しなければならないことはいくつかある。
技法をを重視したものにするか、視覚を重視したものにするか、
気を重視するのか。 それまでの経験をどう頼るのか。

もちろんどこを重視しようとも、どれも欠けてはならない要素である。

書が読めれば良いなら、誰が書いても同じである。
経験者と、そうでない方々とで範囲に差はあるが、いずれにせよ可読性は作品の第一義にはならない。
技法とは古典から捉えることのできる多様な筆遣いのこと。
視覚とは作品が表出されたときどう見えるかと言うこと。技法や無為からくるものを含めた様々な現象が作品を為す。
気は技法の中に内在させるもの。たとえ同じ技法を使っても、同じものは二度できないわけだから、書の瞬間性と気は密接に関係している。
技法や視覚はある程度予測や計算ができ、経験でカバーできる。それでも気の使い方はなかなかコントロールが効かないものだから、気が最重要とも言える。

できるだけ技法を省いて、気の表出を重視して作ることを試みた。
技法を省くことも技法のうちで、土台となる力がなければ省くこともできないわけで、想像を超えて遥かに難しさを感じた。単に気合いで書けば良いということもない。

「石」 字を用いたのは画数が少ないことと、塊としての様相があること。
この作品においては、できるだけ古典に近づけたくはなかった。

「石」のイメージでも、「石」字の古典性でも、「石」という言葉でもなく
存在のみを打ち出したいと考えた。

山があって谷があってそこに気のうねりが生まれる。

試みとしてもう一度同じ素材 「石」 を使って、次回の公募展に出品した。

第66回独立書展

意識はこの作と同じである。 違うのは大きさだけ。 でも大きさが少し違えば、気の表出され方も全然違う。 ぜひ、ご覧ください。