書家 小野﨑啓太

第69回独立書展 大作

2021.1.14

第69回独立書展 大作

今年は大作展に出そうかな、やめようかな、本当に気乗りせず、しかし、14年間続いた落選記録も今年で15年記念ではないか。8月末日の明朝に思い直し、筆を取ったのです。
選んだのは菅原道真の和歌「東風吹かばにほひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」この句には少し思い入れがありました。まだ20代も前半だったころ、今思えば誰もが知るようなこの歌を、師匠が教えてくれたからです。なぜ教えてくれたかはわかりません。「俺がいなくなっても、梅の花咲かせろよ」とだけ言っていました。ボソッと。ニコッと。私にとって忘れ難い歌なのです。
この大作部門で師匠に作品を見せることはついぞかないませんでした。「あるじなし」となったいま、「東風」はどこから吹いてくるのだろう。春を忘れないように、梅の花、咲くように、にほひ、そっちまで届くように、これからも書芸に向き合います。
コロナ禍でいつもの1割以下の人にしか、見てもらえないものと思います。それでも行ってくださった方、見てくださった方、ありがとうございます。たくさんの人には見てもらえなくても、師匠への個人的な手紙のようなものですから、それもそれで良かったかなと思います。

少し内輪の話ですみませんでした。

「独立書展」国立新美術館で大作を展示中です。

  第69回独立書展
・会期 令和3年1月7日(木)~17日(日)
午前10時~午後18時(入館は30分前まで)
・休館日 令和3年1月12日(火)
・会場 国立新美術館
東京都港区六本木7-22-2
「乃木坂」駅下車直通  「六本木」駅下車徒歩10分