端渓硯(老坑)約8吋
硯の王様とされる端渓の中でも最上とされる石質「老坑」による硯です。
「端渓」とは中国広東省の肇慶を流れる西江支流の名前です。
私は訪れたことはありませんが、山脈の美しい風光明媚なところと聞いています。
唐の時代から端渓硯の知名度は高まり、多くの硯材が採掘されました。
端渓の鉱脈には大きく分けて二つあり、「山坑」と「水岩坑」とがあります。
先日訪れた「青栁派の硯展」
寶硯堂4代目若店主である製硯師の青栁貴史さんは、
「良い鉱脈には必ず多くの水が流れている。水と石との関係は深い」
と、硯の鉱脈と水との関係についておっしゃっていました。
硯の展示スペースにて、その水の流れる音を流し、鉱脈の姿を写真で再現されていたのだから本当に思いも深いのでしょう。
「良硯を見分けるには、まず石に水を付けること」とよく師匠から聞かされました。
軽く十円玉くらいの水を付ける。すると良硯は、水を石に引きつけるかのように水が玉を作る。
石の鋒鋩によって水をはじくのだと思います。
駄硯はというと、水が流れてしまったり水を吸ってしまったりするようです。
さらに良質の硯は、丸くふわっとした水滴になるのではなく、水に引力を与えたように水の中心をぐっと石に引きつける。
上記写真の端渓老坑硯は、水を全体につけてみたものです。
白く透き通るように見える箇所は「冰紋」と呼ばれる端渓特有の石紋。
ヒビ??と思われるほど横に走った線は「金線」と呼ばれる石紋。
ともに美しさの魅力の一つです。
老坑という石は、鋒鋩のきめ細かさ、強さもさることながら、
その石の姿自体に静かな華やぎがある。
いま端渓老坑は閉山され、日本国内でお目にかかれることもとても少なくなった。
最後のチャンスかもしれないと感じ、硯に引き寄せられるように購入したこの硯。
「硯」の本字は「研」
端渓の地で数万年の間ふんだんに水を浴び、名の通り水によって研がれた石。
「文房四宝」 (筆・墨・紙・硯)
その中でも硯は、消耗品ではないだけに長きにわたり多くの人に寵愛されてきた歴史がある。
「硯の普及から、筆文字文化に繋がれば、」と青栁さんは話していた。