栃木県大田原市、八溝山地に抱かれた渓流の中に、
ここ、雲巌寺があります。
先日、約五年ぶりに訪れました。
芭蕉をはじめ、水戸光圀公など多くの著名な人々も訪れた歴史ある地であり、
また今以てその頃の風景の名残をのこす数少ない場所でもあります。
山中にあり、近付くまではその様相を露わにせず、ひとたび門の前に立つことでその荘厳な姿を拝むことになります。
右手には樹齢550年の杉の巨木、朱色のそり橋は日光の神橋を思わせ、遙か下からそそぐ渓流のせせらぎが遠く耳に響き渡ります。
五感の全てがシンメトリーの世界に。
父と母に連れられ、幼い頃から何度も訪れたこの地は、私にとってとても大切な場所。
家から長く遠い道のりは子供の私には退屈なものでしたが、いつもこの景色には心打たれ、また大人になってからも変わらない景色を見つめたく、何度か訪れています。
新しい自分を。
あの頃の自分の気持ちに戻りたい。
自分の人生の節目節目に、ふと訪れているように思います。
若い父と母にとっても、きっと大切な場所だったのでしょう。
私たち家族の寝室に飾られた雲巌寺の写真を毎日目にして、私は眠るのでした。
雲巌寺、大切な人と、訪れてみてはいかがでしょうか。