「望」 120cm×90cm
今年の栃木県芸術祭美術展、「望」を出品した。
空海の風信帖第三通に心を寄せての制作だが、遠く及ばない。
普通、「望」字の草体は、一画目の点から二画目の縦画だが、二画目は一画目を受けてもっと長くなければならないのではないかと思う、が、空海のこの「望」は、最低限の二画目にして一画目の高さ、遠さを図っている。
もともと空海は一点の強さを出す仕事が見事だ。
簡略化された草体であれば、自ずと画と画の関わりが薄くなる。 締まりのない、弱い書にならないために、一点の強さと懐抱性が必須。
風信帖第三通に通ずる金剛般若経解題などにはその極致がみられる。
「望」Hope と書いてなにを望む?
「何望むなく願ふなく」 という中原中也の一節が頭をよぎった。