書家 小野﨑啓太

敦煌漢簡~木簡臨書④~

2018.4.10

敦煌漢簡~木簡臨書④~

「天漢三年」


二玄社 書籍名品叢刊より

 

起筆がグンと突き込んで筆を押しつぶしその弾力で線をはじく。
上記木簡の画像右側のものだが、とても魅力がある。
この時代、筆は後代のように上質のものではなかったのだろう。
ネズミの髭をまとめて縛ったもの、と聞いた。
ばさつく毛をいかにまとめて使うかは、起筆をどう処理するかによる。
「楷書」のような トン とした起筆はそのような筆では実現できるはずもなく、そのような技術が使われるようになるのはまだまだ先の時代の話だ。

グッ っと筆の穂先を押しつぶす。 筆に弾力がついたところで線をはじく。
起筆部のはダマができる。
素朴で豪快。 隷書でありながら篆書の名残をみせ、後漢の隷書などにはない自然な右肩上がりも魅力である。

見えるままに「年」は臨書してみたが、正しくは横画がもう一本多い。
天簡三年、木簡の中でも最も古い紀元前98年(前漢)のものである。